街が好きな理由

 

 

関東に引っ越してきて、一年以上が経つ。今住んでいる街にも愛着がわいてきた。恋人が住んでいる街にも、よく飲みにいく街にも、たまに散歩しに行く海辺の街にも。思えばここは、昔から住んでみたいと願った都市だった。自分から選び取ったわけではなく、外的要因によってここに連れられてきたことを、勝手に運命のように感じている。

 

どこの街にも歴史があり、今でもその片鱗を見るたびに好奇心とノスタルジーでふわふわした心地になる。地元のターミナル駅を思い出した。高校3年生の頃、ちょうど新幹線の開通に合わせた大規模な再開発が進んでいた。仮駅舎は無機質で余計なものがなく淡々としていて、こじんまりとした中にお土産ショップが並んでいた。改札を抜けるまでの間はいかにも工事真っ只中のスロープをくぐり、それからよく駅前の図書館まで勉強しにいった。大学生になるタイミングで駅は少しずつ新しく、大きくなり、自分の未来への希望とこの土地にやってくる新たな未来を重ねていた。そんな環境も含め、何もかもが前向きだった。追い風のように思えた。地元を出たくてたまらなかったはずなのに、それでも新鮮な気持ちでいられたのは、新たな進路を歩む自分とあの街の発展がきれいにリンクしていたからかもしれないな、と思う。

 

今の整備された駅も好きだけれど、私はあの高校生の頃に見た景色を今でも思い出す。失われていく昭和のノスタルジーに寂しさを感じるのはもちろんだけれど、私が毎日を懸命に生きていた平成ど真ん中の景色だって、少しずつ壊され、そして姿を変え続けている。プリクラを撮りに行った駅前のゲームセンター、レトロな喫茶店で食べたオムライス、放課後に行ったミスド。今はないあの景色のことを思う。